西緒さんの冬コミ委託スペースで無料配布されたSSのティアナ視点。
読み終わったら一気にフレーズが浮かんで、勢いだけで書きました。
私的解釈全開です。
数日前、あいつがおまえのオカリナを持っているのを見かけたんだ…。
彼と一緒に暮らすと告げると、言いにくそうに教えてくれた狼さんに、
いつまでも手元にあると踏ん切りがつかないし、
捨ててほしいと私が頼んだの。
気に掛かっていたことが全て腑に落ちた私はそんな嘘をついた。
何度もお礼を言い、狼さんの家を出る。
あの日彼に引き止められた場所で一度立ち止まり、すぐ傍で感じた血の匂いを思い出した。
不安と哀しみで一杯だった時、向けられる好意を知っていて、抱きしめてくれる腕に、優しさに縋ってしまった。
それが、彼が想いを黒く歪ませるきっかけになったのなら、初めて愛した人を失う原因を作ったのは私。
その手を血に染めさせたのは、―― 私。
薄々気が付いていたのに、今度は彼を失うのが怖くて、いつもそこで思考を止めていた。
甘えてばかりいたせいで、彼は穏やかな笑顔の裏で、自分が消し去った人への嫉妬を滾らせていたのかもしれない。
形見であるオカリナを、黙って壊さずにはいられないほどに。
ねえ、この言葉は、
あなたの心を少しでも癒すの? それとも、もっと苦しめるだけ…?
分からないけれど。
私は最期まで何も知らない振りをして、ずっと…あなたと生きていくから。
「愛してる…」
激しく抱かれることにも慣れ、痛みもなく昇りつめた後、
荒い息でそう囁き、私は自らそっと唇を寄せた。
fin.
2012,12,30
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メッセージ
ありがとうございます♪
罪を犯してティアナを奪い、それでも嫉妬に苦しみ、もがいている大人さん。
手段の汚さや自分勝手さが分かっていても切ないです。
なんかもう、充分苦しんだんだから、本当の意味で幸せになってほしい…。