大きなベッドと腕枕

 今日届いた新しいベッドで快感に翻弄され、幸福な疲労感に酔いしれて熱い腕に額を寄せる。
 色違いの枕もちゃんと用意してくれたけれど、情熱的に愛し合った後はやっぱり腕枕がいい。
 でも、
「―― あ、これじゃ、前と変わらないわよね」
「バカ、おまえにくっつかれたくなくて、大きなベッドにしたんじゃない。
 つまらないことを気にしてないで、こっちに来い」
 苦笑と伴に、少しずらした身体をやや強引に引き戻される。
 そのままゆっくりと味わうように何度も舌を絡めた狼さんは、口調に僅かなからかいを含んで続けた。
「このくらい広ければ、おまえが夢を見て寝ぼけても、床に落ちたりしないだろう?」
「それは前に一回あっただけじゃない。
 私がいつも寝相が悪いみたいな言い方しないで」
「はははっ、そうだな、悪かった。…ん……」
「…あ……ふ…」
 軽く尖らせた唇を、再び深く塞がれる。
 まるでキスする口実を作る為に、わざと拗ねさせられたようで。
 手の内で簡単に踊らされたのが悔しいのに、結局交わす温もりはすぐに、悦びへと変わってしまった。
「まあ大きい方が、色々と都合がいいしな」
「狼さんが言うと、なんだかすごくいやらしい意味に聞こえるわ」
「何だ? ベッドで俺にいやらしいことをされるのは嫌なのか?」
 にんまりと、答えを既に知っている瞳が笑う。
「嫌に見える…?」
「はっきり言うが、見えない」
「もう…、ふふっ……正解…だけど」
 また悪戯に肌を辿っていく指がくすぐったくて、小さく笑みを漏らす。
 今度は自分から口付けたら、もっと感じる処にも触れてほしくなって、思わず腰が微かに揺れた。
「……さっきのじゃ……足りないのか?」
「足りなくさせたの、……狼さん…でしょ」
「ああ…そうだったな…。安心しろ、ちゃんと…責任は取る」
「それ、…どちらかと言えば……不安…だわ」
「おまえ…、本当に生意気だな」
「あっ……やぁ…んっ…」
 敏感な場所に与えられた望み通りの刺激に、素直に甘い声が溢れてくる。
 狼さんは満足げに口の端を上げると、キスを続けながらそこを撫でる指を増やした。

fin.

2011,12,10

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