Blue Rose

 それはまるで、決して手折ることのできない、
 天上に咲く青い薔薇のように ――― 。

 呼び掛けられ、振り返る。
 やわらかな光を宿す瞳と視線が重なった瞬間、知らず息を呑んでいた。

 笑顔も声も、きっと永遠に、自分だけのものにはならない。

 手に入らないからこそ、焦がれるのか。
 届かないからこそ、哀しいほどに綺麗なのか…。

 吐息を感じられるほど傍にいながら、指先にさえ触れられない。

 遠く近く…、波が寄せては引くように、
 いつまでも、本当の意味で君に辿り着くことはできない。

 君を強く抱き締めたまま、伴に闇に堕ちる。

 そんな愚かな、密やかな希みを捨てきれずにいると、
 知ったら君は、変ってしまうのだろうか…?

 そして今夜も、
 蒼い月光の元、純白の翼で舞い降りる君を見つめる。

 胸の奥底に、

 深く、甘く苦く、
 叶わない、けれど終わらない、
 何処か危うい、熱を孕む想いを秘めて。

fin.

2005,04,17

Back