ただ抱きしめて眠る。
それで済まなくなるのに、さして時間は掛からなかった。
変わらぬ拒絶に、説き伏せる言葉を探す代わり望んだ、許される限りの愛撫。
次第に快楽を覚え、見せる表情や零れる嬌声(こえ)は、理性を失わせるほどに甘く。
けれどそこに必ず含まれる哀しみが、振り切れてしまいそうな欲情を一線の手前で押し留める。
そして求める温もりは、その一線の際(きわ)まで近づき ――― 。
「レオン様、……これ、すごく恥ずかしいです…」
互い違いになり上に乗るよう教えると、素直に従いつつも、長い髪が躊躇いがちに揺れてこちらを振り返る。
「だけどこれなら、ふたり一緒に気持ちよくなれるだろう?」
「………」
こういう反応は予想していた。
無理にやらせるつもりはなかったが、羞恥を残しながらも小さく頷いたくるみは前を向き、いつも通り指と舌を使い始めた。
「……はあ……く…」
熱い息を吐き出し、自分も溢れ始めた雫を唇で掬う。
しばらく会話も交わさず、同時に愛しい人の肌を味わう愉悦に浸った。
一つになる為に高め合うのではなく、一つになれない故に慰め合う。
後に来る、愛情と同じだけの哀情。
分かっていて、伴にこの代替行為に溺れていく。
刻限のある関係が行き着く先に目を逸らしたまま。
真に満たされることのない悦びを夜毎…、繰り返す。
fin.
2012,12,08
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