隣り合う体温が、以前添い寝した時よりやや高い。
欲しいと、望んでいるのはきっと同じで。
それでも ――― 。
「レオン様、……甘えてもいいですか?」
「何だ…?」
髪を撫でたままそっと問い返す。
「子守唄を…歌って……」
「………」
「歌って…」
掠れた声と、不意に零れた涙を唇で受け止め、自然に口付ける。
甘く切ない温もりを交わして微笑うと背中をやさしく叩き、静かに歌い始めた。
ゆっくりと閉じられた瞳に安堵し、せめて穏やかな眠りに就けるよう願う。
やがて聞こえてきた寝息に唄を止めても、レオンはずっと長い髪に指を絡めていた。
ごめんなさい。
抱かれることはできません…。
愛してるから、
私はレオン様の呪いを解くの。
純粋に抱きたいと、告げなければ良かったのか。
赤月に捧げられた人間の乙女は、白い蝶と化しあらゆる呪いを解くと、話すべきではなかったのか。
本当はすぐにでも、別荘へ送った方がいいのか…。
生贄にしたくない。
傍にいてほしい。
誰よりも深く触れたい。
愛情から生まれた欲情は、変わらず胸にあるけれど。
これほど愛おしいと思った女が、その命を犠牲にする覚悟で拒んだ気持ちを踏みにじれない。
だがそうして赤月の晩を迎え、おまえを失って、
遺された世界で一人、生きる意味などあるのだろうか……?
「ん…」
眠りが浅いのか、夢うつつに伸ばされた手を取り、瞼に軽いキスを落とす。
もっと耳の近くで子守唄を聴かせると、淡い笑みがくるみの口元に浮かんだ。
「……くるみ…」
伴に求めながらも、互いに大事にしたいが故に、相反する想い。
決断を引き延ばせば、いつか返る苦しみが増すばかりなのだと、今日痛感したはずなのに。
心は初めて識った感情を上手く処することができず、幾ら自問を繰り返しても、やはり手放したくないと駄々をこねている。
そしてただひとつだけ、
「愛してる…」
確かに誓える囁き(ことば)は青い月の光に揺れて、深まる夜に溶けていった。
fin.
2011,11,12
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