午後の執務の合間。
昨日届いた本のページを捲るたび、ソファーの向かい側で長い髪の先が揺れる。
気付かない振りで文字を追い続けていたら、ふと、落胆したような微かな吐息が聞こえた。
左手の動きをちらちらと窺っている大きな瞳。
適当な所に差し込まれていた栞を取り出すと、その蒼が今度は期待を映して輝く。
だが再びページを繰る音に、またすっかり意気消沈し…。
あまりにも素直な一喜一憂を視界の端で捉え、レニは声を殺しつつも思わず笑ってしまった。
「?」
「アーシェ」
テーブルに本を置き、愛しい后の名前を呼ぶ。
ぱっと顔を上げて駆け寄ってきた背中を抱きしめ、額にそっとキスを落とした。
「……もしかしてレニ、気が付いてた…?」
「まあ、あれだけ視線を感じればな。
おまえの反応が可愛くて、焦らして悪かった」
「―――」
指摘されて急に恥ずかしくなったのだろう。
言葉に詰まり、ほんのりと赤く染まった頬に触れる。
繰り返し撫で、身を委ねるように伏せられた瞼に軽く口付けると、くすぐったいのか小さな笑みが零れた。
「私も読書の邪魔してごめんね。
レニが読んでる本にヤキモチ焼いちゃうなんて、やっぱり子供っぽいよね」
「俺はそんなおまえが可愛くて仕方ないんだから、何の問題もないけどな」
「レニ……ん…」
ちょっとした悪戯心で気を揉ませた分、指と唇をやさしく重ねる。
読みかけの本は結局放置したまま、
にこやかに会議の時間を知らせに来たカイルが、一旦開けたドアを焦って閉めるまでずっと、温もりを甘く繋げていた。
fin.
2012,02,11
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