久しぶりに一人きりで過ごした夜が、余程淋しかったのかもしれない。必死に、そして何処か甘えるように求めるレニに夢中で応えながら、繰り返し、愛しいその名を口にする。
そうやって幾度か肌を合わせた後で、腕枕の感触と髪を撫でてくれる手に、アーシェは恍然と青い瞳を見上げた。
「……レニ…」
「何だ…?」
「ほんとは私もね、一人で眠るの、すっごく淋しかったの…」
でも、「大嫌い」と叫んで飛び出した手前、ふたりの部屋にはなんだか戻り辛くて。
何より、チョコレートのことを隠しているのが、やっぱり少し、後ろめたくて…。
「アーシェ…」
愛情に満ちた声で呼ばれ、見つめられて、勢いとはいえ、あんな言葉をぶつけてしまったことを心底後悔する。
見た目より広い胸にぎゅっと抱きつくと、それが伝わったのか、レニは今度はゆっくりと背中を撫でてくれた。
「おまえには、他の男のことなど考えてほしくないと思っていたが…」
「……が?」
「おまえの陛下への思い遣りは、俺にも嬉しかった。
そういうやさしさは、出逢ったばかりの頃と変わらないとな…」
「レニ…」
穏やかに微笑う眼差しも口調も、とても温かく、和らいでいて。
どんなに美味しいチョコレートより、甘やかに心を溶かしていく。
アーシェは満面の笑顔になると、その頬にそっとキスをした。
「今度チョコレートが手に入ったら、ふたりで半分こして食べようね」
「ああ」
「いろいろ心配させちゃってごめんね。
―― レニ、だぁい好き!」
一度、声(ことば)にしたものを、
過去に戻って無くすことはできないけど。
大嫌い。―― 私がそう言ってしまった時の気持ちを、
あなたが全部忘れてしまえるくらい、
今日は何回でも、大好きって伝えるね。
返事の代わりに重なった温もりをもっと感じたくて、両手をレニの首に回す。
「…ん……、だいすき…」
唇を軽く触れ合わせたまま呟くと、
まるでそれを合図にしたように、口付けはまた深くなっていった。
fin.
2008,11,27
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