一瞬を繋いだ永遠

 互いに、判っていて繰り返す嘘。
 そして毎日、願った通りに返る応えに安堵する。
 この瞬間、
 僕は、君の全てを得ているのだと…。

 君を膝の上に乗せて、
 小さいけれど精巧な硝子細工を見せる。
 愛人達へ贈った物の余りだと、
 言っても君は、「嬉しい」と微笑うから。

 白い手のひらに置いた緑の小鳥を、愛おしそうに見つめる。
 その横顔に、揶揄を含んだ言葉を向けた。

「君なら、そっちを選ぶと思ったけど…」
 一つ残った花を示す。
「だってこれは、エメラルドグリーンだもん」
 だから、

 好きだった青い薔薇より、
 初恋の男の瞳と同じ色より、

 この鳥を選ぶと、

 僕だけの人形は、
 今夜も、望んだままの答えをくれる。

 だけど……。

   忘れないで。
   私はセイジュのお人形なんだよ。

 ―― 本当は、…識っている。

 ただ空っぽの人形などではなく、
 今も君には、
 以前と変わらない意志も、感情もあるのだと…。

 そっと、華奢な肩に額を当てる。
「……今日は少し、疲れたかな…」
「うん…」

 やわらかく髪を撫でる指。

「セイジュ、大好き。愛してる…。
 愛してる、セイジュ…」

 子守歌のようなやさしい囁きに、
 導かれて目を閉じる。

 やっぱり僕は、信じたいのかな…?

 君を傷つけ、君に憎まれ、君を殺す。
 実際、その首に手を掛けた僕に、

 それでいいと、
 何もかもを受け入れて、

 こうして一瞬を、
 伴に繋いでくれる君の愛(おもい)が、
 ずっと…僕の元に有ることを。

 いつか心から、
 信じられる日が来るのかな……?

 否定しながら求めて止まない“永遠”は、
 もう既に、
 君の内(なか)に、有ることを ――― 。

fin.

2008,11,09

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