唐突に、やや極まり悪そうな表情で差し出された薄い包みを、訳が分からないまま受け取る。
とにかく開けてみろと促され、可愛らしい包装紙を解いたアーシェは、青いドレスと白いエプロンの少女が描かれた絵本の表紙に目を瞠った。
「レニ、これって…!」
「おまえが随分とあの人形劇の続きを気にしていたからな。人間界を出る前に探しておいたんだ。
まぁ読んだら、やっぱり適当に話を作っていたんだと、また怒られるかもしれないが…」
「ううん、そんなことないよ。
ありがとう、レニ!!」
大きく首を振って、思いがけないプレゼントをぎゅっと抱きしめる。
展開は滅茶苦茶だったがとても楽しかった夢と翌朝のキスで、もうすっかり満足していた。
寧ろ誤魔化そうとしていたはずのレニがずっと気に留めていてくれたことが、何よりも嬉しかった。
「アーシェ」
何処か眩しげに眼差しを和ませて、大きな左手が頬に触れる。
「これから読んでやろうか?」
「いいの!?」
「ああ。ただし、読み方に文句は言うなよ」
「うん!」
思わずはしゃいだ返事と同時に、背中から膝の上に抱き上げられる。
しっかりと回された両腕は、いつもより熱くなっていて。
実はさっきから照れていたのかなと、声を忍ばせて微笑った。
「なんだか、ちっちゃな頃に戻ったみたい」
最初のページを開き、今度は、通り過ぎた懐かしい感覚に唇が綻ぶ。
耳元で怪訝そうに再び名を呼ばれ、首を後ろに向けかけたが、案の定、振り返らせてはもらえなかった。
「昔一度だけ、パパに抱っこされて、青薔薇姫の本を読んでもらったことがあるの。
魔王になったレニにもこうやってお話を読んでもらえるなんて、すっごく贅沢で幸せだよね」
きっと赤くなっている、今のレニの顔を見られないことだけは、残念だけれど。
知りたかった物語への期待と、温かなやさしさ。ふわふわとした心地好さに充たされながら。
まるで本当に小さな子供になったような気持ちで、
見た目より広い胸に、アーシェはそっと身体を預けた。
fin.
2009,12,12
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