Cherish

 確かにきっかけは、あの涙だった。

 だけど、助けたいとか心配とか、そんな気持ちの奥に、
 もうひとつ…、別の想いがあるみたいで。

 それはなんだかフクザツな、
 今まで、君にしか感じたことのない、―― “何か”。

 他のヒトに作り話と疑われるような、不思議な出会いだったから、
 君が、大変なことに巻き込まれているらしいのは知っていた。

 でも、

 その失くした記憶が抱えるものは、オレが考えていたより、
 もっとずっと大きいんじゃないかって最近、思い始めた。

 お節介やお人好しだと、子供の頃からいつも言われていた。
 泣いているヒトを放っておけないのも、昔からだけど。

   わたくしを、ひとりにしないでください!

 遺跡で珍しく取り乱した君の肩を引き寄せて、

 オレはここにいると、

 無意識に口にした時、
 旅に出る前に決めていた、“護る”の意味もいつのまにか、
 少しだけ、変わってきているような気がした。

 それがどんな“意味”なのかは、
 まだよく…判らないけれど。

 オレは、君をひとりにしないから。

 暗い場所でも寒い場所でも、
 あんな涙を流すような辛いことからも、

 ゼッタイに、護るから ――― 。

「迷惑なんて、掛けられた覚えはないぜッ! 気のせいだろ!」
「ふふふ、きのせいですか?」

 君にはそうやって、
 微笑っていてほしいから。

 そんなこと、気にしないで。

 君の宝物を見付ける為に、
 一緒に楽しい、この旅を続けよう。

fin.

2008,08,14

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